保育園のスタンダードに!異文化と子どもをつなぐ世界の絵本

保育園を裏側から支える人たちにインタビューするこのシリーズ。第4回は、保育園に置かれている絵本がテーマです。
イギリス、フランス、スウェーデン、ロシア、中国、イスラエル……さくらさくみらいの保育園には、日本だけでなく、さまざまな国の絵本が置いてあり、子どもたちが絵本を通じて、世界と出会い、世界を知るきっかけとなっています。
そんな世界の絵本を定期的に届けてくださっているのが、株式会社ワールドライブラリー。この素敵な取り組みに込めた思いについて、同社の林様、岩永様に聞きました。

 

目次
・世界の絵本を保育園へ! はじまりは中国の印刷工場
・絵本で文化やお国柄の違いを発見!
・信用ゼロからスタート。信念が名作を生む
・先の見えない時代、多様性を当たり前に

 

世界の絵本を保育園へ! はじまりは中国の印刷工場

――ワールドライブラリーさんの世界の絵本はさくらさくみらいの保育園の子どもたちにも大人気です! まず、さくらさくみらいとの出会いを教えていただけますか?

岩永様:日本こども育成協議会という団体があるのですが、さくらさくみらいさんは会員、私たちは賛助会員という形で参加していて、そこで出会いました。

同団体の会員である保育企業の代表の方が西尾様のことを紹介してくださって、お話に伺ったら「素晴らしいサービスですね」と。すぐに導入を決めてくださり、今も継続していただいています。

左から、林様、岩永様。とても気さくで、優しい雰囲気のお二人。

 

――そもそも世界の絵本を保育園の子どもたちに届けようと思ったきっかけを教えてください。

林様:僕たちはもともと印刷物を作るノウハウを持っている会社なんです。中国の印刷工場ともお付き合いがあって、現地によく足を運んでいました。その工場は欧米の出版社の仕事も引き受けていて、工場内には外国の書籍や絵本がたくさんありました。そんな関係もあって、ドイツのフランクフルトで開催される世界最大規模のブックフェアについていく機会があったのですが、そこで目にした世界中の本にものすごく衝撃を受けたんです。

デザイン、テーマ、内容、判型(本のサイズ)もさまざまで、仕掛け絵本も見たことがないものばかり。これは日本に紹介できるんじゃないかと思ったのが最初のきっかけです。

 

絵本で文化やお国柄の違いを発見!

 

――中でも、絵本に注目したのはどうしてですか?

林様:価値観が普遍的だったことが大きいですね。子どもたちが最初に覚えることといえば、モノの名前だったり、ABCなどの言葉だったり、人として大事な道徳観だったり、どこの国でもだいたい共通していますよね。

大人向けの本だとジャンルが枝分かれし過ぎて、なかなかフォーカスしづらいですから。

――お二人の考える世界の絵本の魅力はどういったところにあるのでしょうか?

林様:たとえば、絵本に登場する家の中の様子も、家具や調度品も日本と外国ではまったく違います。欧米だと玄関で靴を脱がないし、お風呂場にバスタブとシャワーとトイレがあったりするし。イギリスの絵本にはウィッチ(魔女)やユニコーンが出てくるけど、日本の絵本には出てこない。太陽も赤じゃなくて黄色。日本の絵本を読んでいる子どもにとってはちょっと違和感があるんです。

どこにも説明がないから感じるしかないんだけど、「なんでこの色なの?」「なんで靴履いているの?」って不思議に思ってくれたらうれしいし、異文化・多文化教育の入り口としてもすごくいいんじゃないかなと思いますね。

岩永様:例えば海をテーマにした絵本でも、ネムリブカ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%A0%E3%83%AA%E3%83%96%E3%82%AB 外部へサイトへ
メジロザメ科に属するサメの一種 )とかアイスフィッシュ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%AA%E7%A7%91 
外部へサイトへ 血液が透明なコオリウオ科のお魚)とか、日本の絵本には出てこない生き物がいっぱい出てきて、いろんな発見があって楽しいんですよ。

一つひとつのエピソードを楽しそうに語ってくれる林様。

 

信用ゼロからスタート。信念が名作を生む

――サービスを立ち上げるにあたり、一番苦労されたことは何でしょうか?

林様:僕たちがなぜこの事業をやることにしたのかというと、世界の文化と日本の子どもたちの架け橋になると思ったからです。そのツールとして絵本がいちばん適していると考えて、ビジネスモデルに落とし込んでいきました。

その考え方自体は共感してもらえるのですが、実際にビジネスとして世の中に広めようとすると、ワールドライブラリーって何?となるんです(笑)。知らない会社、知らない絵本、しかも、当時はレンタルサービスなんて誰も知らない。知らないこと尽くめで、まったく信用されない。だから、最初のアプローチにはすごく苦労しましたね。

1、2年目はとにかくいろんなところに営業にいきました。保育園・幼稚園だけじゃなく、小児科、歯科、薬局、カーディーラー……。絵本の原書と企画書を持って、ひたすら大使館を回ったりもしました。

 

岩永様:ワールドライブラリーでは比較的新しい作家さんの作品や、日本では無名の作家さんの作品も多く取り扱っています。私たちの会社が若く実績が無かったこともありますが、昔から愛されている日本の絵本だけがいいと仰る方も多くて、その度に、“名作は作るもの”という話をさせてもらって。私たちがやっていることは前例のないことで、実績のない本の第1刷を出している。でも、名作と呼ばれる絵本も、この最初の1刷があったからこそ、その後に何十回、何百回と刷ることができた。そういう本を自分たちの手で作ることができたら素敵じゃないですか、と。それは今でも思っていますし、そこに共感してくださる人たちはビジネス関係なしに応援してくださるので頑張ることができました。

初期に出版した絵本『あおいよるのゆめ』。人気が高く、何度も重版している。こうやって一緒に成長していけるものがあるということも励みだという。

 

先の見えない時代、多様性を当たり前に

――絵本の裏表紙には国旗が入っているんですよね。

林様:これは唯一、オリジナルと違うところです。どこの国の本なのかわかりやすいし、国旗を見て、どこにあるんだろう、何語を喋るんだろう、何を食べるんだろうと考えたり、世界に興味を持つ入り口にしてほしいなと思って。

岩永様:海外の絵本を通じて、自分とは違う人たちがいて、違う文化があること、外の世界は広いんだということを感じてくれたらうれしいですね。

――さくらさくみらいも同じ思いで、開園準備品として、あえて肌や目や髪の色が違う海外のお人形をセレクトしているんですよ。

岩永様:素晴らしいですね。成長するにつれ、人と違うことで不安になることも出てくるじゃないですか。でも、“違っていていいし、それが当たり前なんだよね”っていう気持ちが芽吹いたらうれしいですよね。

林様:たとえば、フィンランドの絵本の中には普通に車椅子の子が出てくるんです。何の説明もなく、子どもたちの一人として当たり前に描かれていて、そういうところもすごくいいなと思います。

絵本への熱い思いがあふれるお二人。

 

――これから保育園やご家庭でどのように絵本とふれあってほしいですか?

岩永様:ワールドライブラリーの絵本に限らず、たくさんの絵本に出会ってほしいと思います。

絵本はコミュニケーションツールとしても素晴らしいので、大人と子どもが一緒に楽しみながら絵本に触れる時間がもっと当たり前になったらいいなと思っています。

林様:この先どうなるかわからない時代ですし、確実にグローバル化は進んでいきます。

でも、子どもを持つ親として思うのは、それを怖がるよりも楽しめる子どもになってほしいということ。そのためのツールとして小さいうちから絵本で海外の文化に親しんでほしいと思いますし、それが当たり前の時代であってほしいと思います。

子どもが成長して世界で活躍するようになった時、世界各地で出会った人と小さい頃に同じ絵本を読んでいたと知って盛り上がる、なんてことが実現できたらすごくいい話だし、幸せなことだと思います。

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保育園で出会った絵本をきっかけに、いつか世界のどこかで同じ絵本を読んだ友だちに出会えるかもしれないと想像したらワクワクしますね!

子ども時代の貴重な時間を一緒に過ごす絵本。そこから広がる世界は思っている以上に多様なのだと感じました。

 

今回お話を伺ったのは…
株式会社ワールドライブラリー 林様(左)と岩永様(右)

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