そのモヤモヤ、五月病かも?セルフケアで心を元気に!【前編】

5月の連休後に、「なんとなくだるい」「仕事にいきたくない」など心身に不調が表れることを五月病と呼んでいます。よく聞くワードですが、実は“軽度のうつ”で、「適応障害」と診断されることもあるんだとか!新しい生活や職場環境などの外的ストレスが原因といわれていますが、症状が軽いうちに対策をとれば軽快するとも言われています。
そこで、さくらさくみらいでメンタルケア研修やカウンセリングを担当されている中里弘樹先生にストレス対策についてお話しを伺いました。
前編では「保育士とストレスについて」、後編では「簡単セルフケア術」も紹介します。心の健康を守るヒントがちりばめられている中里先生のお話。五月病対策はもちろん、日ごろのストレス対策にもぜひお役立てください!
目次
・自分の経験を活かし、心の健康を守る仕事へ転身した中里先生
・注意して!心のストレスは目に見えない…。
・五月病は人間らしい感覚が引き起こすもの
・理想と現実のギャップが生むリアリティショックを乗り越えよう
自分の経験を活かし、心の健康を守る仕事へ転身した中里先生
今、職場におけるストレスから心身の健康を害する人が増えているそうです。さくらさくみらいでは、心の健康を守るためメンタルヘルスケアにも力を入れていますが、その一つが中里先生による研修とカウンセリングです。
そもそも中里先生が、さくらさくみらいのカウンセラーを務めるようになったのは、2016年のある協議会のフォーラムで行ったメンタルヘルスケアに関するスピーチに、さくらさくみらい西尾社長が共感したのがきっかけでした。
「以前は、何百施設という保育園を運営している会社の人事部で働いていて、保育士の教育研修とか採用とかメンタルヘルスに関わる仕事をやっていました。さらに広く感情労働者の役に立ちたいと独立開業した頃、西尾社長と出会いました。フォーラムの次の日にはメールをくださったのを覚えています。」と当時を振り返る中里先生は、さくらさくみらいをはじめ、10,000人以上の福祉系専門職に セルフケアと信頼関係構築のスキルをレクチャーしていらっしゃいます。
注意して!心のストレスは目に見えない…。
そんな中里先生が保育士さんから受ける相談の中で最も多いのが人間関係の悩みです。
相手は職場の上下関係が1番で、次が保護者との関わりです。
「上司との保育観のズレに悩んでいると相談されるのですが、心の中をレントゲンでとるように注意深く話しを聞いていくと、根底にコミュニケーションの問題があると分かります。きつい言い方をされたとか、話しをしてもらえないとか、自分が相手にどう思われているかという人間関係が原因です。」と中里先生。
逆に、園長先生や主任の悩みで多いのは指導の苦しみです。これだけ自分ががんばって伝えているのにわかってもらえないと悩む方が多いそうです。
人間関係に限らず、心理的なストレスは目にみえないからこそ注意が必要だと中里先生は言います。
「辛いなどの感情が強くなっている時は、心の中の整理をつけることが第一。そのためには話を聞いて共感していくことが大切です。やがて整理がついてきたら“じゃあ、どうしましょうか”と、相手とのコミュニケーションの取り方を具体的に一緒に考えていくのが僕のやり方です。」
悩みを口で誰かに伝えただけで、ストレスはだいぶ軽減するそうです。そのため、中里先生は、特に新卒の保育士さんに定期的に“聴く機会”を作ることを勧めています。心の整理をする時、第三者が手伝うことで楽になったり、解決の糸口が見えてくることも少なくないそうです。
「1週間に1回、10分でもいいから、園長先生でも主任でもいいのでぜひ向き合って聴いてほしい。コツは頻度や時間の長さではなく定期的に聴くことです。」と中里先生はアドバイスします。
五月病は人間らしい感覚が引き起こすもの
ストレスの中でも、新入社員に多いといわれる「五月病」ですが、なぜでしょうか?
「人は学校とか家族とか、どこかに自分の心を所属させていて、その中でアイデンティティを持っていると思います。新入社員の場合、3月31日までは学校や家で持っていたアイデンティティが急になくなり、新しい集団で所属感を作ろうと緊張しながら過ごすことになります。そして5月の連休が来て、まだ所属感の構築途中なのに、実家に帰ったり学校の友達に会ったりして、以前に所属していた集団の心地良さを再確認してしまいます。で、連休が終わって仕事に行くのですが、せっかく心地良い場所に帰れたのに、また緊張する場所に行くのかと心が感じるわけです。その落差があまりに急だと感じると、会社に行けない、辞めたいとなります。五月病は、人間らしい普通の感覚なのです。」と中里先生は説明します。
理想と現実のギャップが生むリアリティショックを乗り越えよう
五月病は、リアリティショックが引き金になることも多いと言われています。リアリティショックとは、自分が描いていた理想の自分と現実のギャップにひどくショックを受けてしまうこと。就職はもちろん、転職や異動になった時に直面しがちです。
仕事のやり方がわからない、聞きたいけど、みんな忙しそうで聞けないと、身動きがとれなくなってしまい、そのうちに自分は周りに迷惑をかけているのではないか、自分は役立たずではないかと、自己評価をどんどん下げてしまうのです。
中里先生は「リアリティショックへの対処法として、僕が新卒の研修で繰り返し言っているのは“通り過ぎるよ”ということ。実は、僕自身もリアリティショックを経験しています。一生このまま辛さから抜け出せないような、それは恐ろしい感覚になるときもあるでしょう。でもすべて通り過ぎていきます!」ときっぱり。さらに「これは知識として絶対に覚えておいてほしいこと。いうなれば、雨はいつか止むのと同じです。天気の知識があれば容易に対処できるのと同じことなのです。」との力強い言葉が印象的でした。
さて、ここまで保育士さんがこの時期抱えがちなストレスについてのお話を聞いてきました。いよいよ後編では具体的な「ストレス対策」を紹介します。本当に簡単ですから、ぜひ試してみてくさい。

今回お話を伺ったのは…
中里 弘樹先生
セルフケア・ラーニング代表。
精神保健福祉士/産業カウンセラー/アサーティブトレーナー
「人間関係開発の支援」と「メンタルヘルス対策の支援」を専門とするカウンセラー、研修講師。これまで新社会人から管理職まで延べ約10,000人以上の保育者に「コミュニケーション」「信頼関係構築」「マネジメント」「メンタルヘルス」等の講義を提供してきた。現在も様々な法人に研修プログラムを提供しながら、職員の指導方法や人間関係改善、メンタルヘルス等の個別相談を担っている。
さくらさくみらいにご興味を持った方は…